トロントに来て4年も過ぎ、すっかりここに住み慣れたあたし。
それでもたまにトロントっていいなと改めて思うことがある。
例えば、LGBTQの若者向けのアートプログラムなんかけっこう充実しているのよ。
トロントのネタ市長のロブちゃんなんてこういうプログラムは無駄と言うけど。
あたしが見た限り、アートプログラムに救われる人はとても多い。
例えば、この前LGBTQの若者によるマガジン出版イベントに行ってきたんだけど。
荒削りな才能に溢れた彼らは、自分たちの経験を文章に、詩に、歌に変えていた。
学校でホモフォビアや人種差別によるいじめとの戦いだったり。
トロントのゲイコミュニティの中でアジア人として感じる違和感や葛藤だったり。
家族や兄弟の中で、セクシュアリティと宗教の共存に励む話だったり。
そうして生まれた彼らの作品たちをこのマガジンは収録している。
多種多様な物語を秘めている若者たちの可能性を引き出すために。
このプログラムでは自由に書ける場所、技術、そしてサポートを提供している。
もちろん、このプログラム以外にも様々なものが他にあって。
演劇だったり、ダンスだったり、音楽だったり。
「高校生の頃にこんな機会に恵まれていたらな。」
とあたしはとても羨ましかったりする。
こういったプログラムを踏み台に、大きく羽ばたいた人も実は多い。
トロントで有名なローカルなLGBTQのアーティストたちの中でも。
元をたどれば、コミュニティの小さなプログラム育ちなんてよくある。
LGBTQの若者といえば、自殺率がストレートの若者より高かったり。
ホームレスになったり、いじめで学校を続けられないケースも多い。
こんな状況下で、こういったネガティブなことをバネに強く育つにはサポートが必要不可欠。
だからこそ、アートは自分のアイデンティティや歴史を学べ、様々なスキルを得られ、ネットワークも築ける有効なツールなわけ。
ただ、やっぱりこういうプログラムはボランティアだけでは運営できない。
政府や企業から支援金がないことには成り立たない。
最初に、“充実”していると書いちゃったけど。
これはあくまで日本と比べた場合の話で。
実は政府から降りるアートプログラム向けのお金は多くない。
長い目で見れば、アートって安上がりな福祉サービスなんだけど。
保守的な政府に支配されつつあるカナダで、支援金をこれ以上もらうのは難しい。
成果が目に見えにくいプログラムはすぐ切り捨てるんだもの。
社会的弱者をサポートするものを簡単に無駄とは呼んでほしくないわ。
これ以上書くと、だらだら政府の文句が続いちゃいそうだけど。
とりあえず、こういったプログラムが存在することには感謝したい。