今日、どっと疲れたわ。
なんでかって、彼氏の母親に紹介されたからよ。
去年の夏に、うちの彼はキャシーママに会っているんだけど。
今度はあたしが向こうのお母様に紹介される番で、死ぬほど緊張したわ。
キャシーって基本的にマダムキラーで親ウケいいんだけ、今回は微妙だった。
というのも、ある程度ゲイに理解のあったうちの母と違って。
彼氏の母は、彼がゲイだってことをそこまで良く思ってないらしく。
しかも、今回キャシーを彼の母親に紹介することになった経緯もひどかった。
今年の初めに、彼に同棲の話を持ちかけたあたし。
引越しの日にちも、住む場所も決まった頃。
「お母さんが台湾から遊びに来るとか言ってるんだけど。」
「え?いつ頃?」
「四月中旬。」
「ちょっと、それって。」
そう、ちょうどあたしたちが引越しをする時期だったわけ。
彼の母親はあたしたちが付き合ってたことは知らず。
同棲までしようとしてるなんて想定もしているわけもなく。
そんな状態で、うちの彼は唐突に母親に全部話したわけ。
あたしだって、自分の息子がいきなり同棲するとか言い出したら。
「あんた、何処の馬の骨かもわからない輩と!」
って、思っちゃうわよ。
普通、そういう大事なことは相談してほしいじゃない。
バレる寸前で言われてもリスペクトもクソもないわ。
きっと、彼の母親のあたしの第一印象は最悪でしょうね。
間違いなく、どこかの馬の骨以下だわ。
結局、彼氏が気を利かせて一緒に食事をすることになったんだけど。
本当に会わせる顔がないというか、後ろめたさでいっぱい。
「あたしがあなたの息子を惑わせたヤリマンのキャシーです。」
って、自己紹介した方が逆にしっくりくるくらい。
その上、今のキャシーの髪型は前髪と後ろ髪がブロンド。
このままじゃ本当にチャラチャラした人だと思われちゃう。
そう思って、わざわざ美容室で茶髪にまで戻して。
あご髭もキレイに整えて、フォーマルに着飾って。
必要ないと彼氏に言われても、ちゃんとプレゼントも用意。
予約も受け付けない人気レストランに約束の1時間前に行って。
オーナーとのコネを使って、並ぶことなく席も確保したあたし。
これで、あとは彼の母親の前で華麗に振る舞えば。
と思ってた矢先、彼氏とその母親が一緒に到着。
席に案内して、頑張ってコミュニケーションしたんだけど。
あたしの下手な北京語でも、英語で何を言っても通じず。
彼の母親も、あたしと目を合わせようともしないで、彼氏と話すばかり。
「あれ?なんかあたし透明人間の気持ちがわかる。」
と心の中で思っても、何もすることはできずに。
「あんた、なんか話ふりなさいよ!」
って彼にアイコンタクトを取っても。
「俺だって何言えばいいのかわかんないよ!」
と返されて、もうどうにもならない。
とりあえず、プレゼントの春物スカーフを渡して。
黙々と目の前の料理を食べながら、必死で間を持たせる。
テーブルの上のお皿がキレイに片付くまで、交わした会話は挨拶だけ。
さらに、彼氏にあれほどお会計はあたしが払うと前もって言ったのに。
結局押されて、彼の母親にご馳走になってしまった。
そのまま、お礼だけ言ってお別れしちゃったんだけど。
これでよかったの?本当によかったわけ?
なんかあたし、凄いダメ人間だったんだけど。
と、頭を抱えながら落ち込んでたら、携帯に彼氏からメールが届いて。
「お母さん、スカーフ気に入ったみたいよ。」
とのことで、20%くらい苦しみから解放された。
でもさ、もう過ぎたことだし、ここは諦めるべきね。
「あんた、うちの子と別れなさい。」
とか、彼がトイレに行ってる間に言われたわけでもないし。
もっとポジティブシンキングしていいわよね。
もう、あたしはベストを尽くしたのよ。
もちろん、彼氏の母親が台湾に帰ったら。
彼と反省会して、いかに彼が助けてくれなかったか文句たらすけどね。
まぁ、何を言っても、あと2週間で同棲生活が始まるあたしたち。