先日、仕事でウィンザーとレミントンに行ったと記事で書きましたが。
今日は、その衝撃的な事実とやらを、少し話そうかと思います。
正直、まだ消化しきれていない部分もあるんですが、キャシーなりの理解の元に書きます。
トロントから車で4時間以上離れたウィンザーとレミントン。
ウィンザーは、アメリカのデトロイドがすぐ近くに見えるなかなか栄えた都市で。
レミントンは逆に、畑が一面で、都心部もウィンザーよりずっと小さいです。
レミントンの畑で、夕日を眺めるキャシー。
キャシーたちがなぜこんな場所まで来たのかというと。
ここで、畑仕事をするタイの移住労働者たちを訪れるためです。
カナダは、土地は広大だけど、人口がめちゃくちゃ少ないんです。
だから、多くの企業は労働力を補うのに、移民や移住労働者に頼っています。
移住労働者たちは1年や2年の期間限定契約でカナダに訪れ。
お金を稼いでまたそれぞれの国に帰ります。
多くの移住労働者は、メキシコやタイ、フィリピンから来ていますが。
キャシーの勤める団体は、主にタイの移住労働者を助ける活動を行っています。
ここまでが、キャシーの一般的な理解でした。
その日、あたしとあたしの同僚はウィンザーに人権問題関係のフォーラムに参加。
あたしの同僚はそのフォーラムで話す人の翻訳を勤めるということで。
座ってフォーラムを聞く役立たずのキャシー。
壇上に上がったタイの移住労働者たちは。
彼らが経験したことを淡々とタイ語で語り始めました。
多くのタイ人の移住労働者は、タイの貧困層出身で。
彼らの生活は非常に苦しく、少しでも多くお金を稼ぎたくて、カナダに働きに来ます。
そんな彼らをカナダの企業へ繋ぐ役割の人たちは、こうけしかけるのです。
「カナダに来れば、今の数倍も稼げて、さらに永住権も手に入って、他の家族もカナダに連れて来れて、家も買って、牧場や畑も経営できるよ。」
こういう人たちのことを、リクルーターと呼ぶんですが。
彼らは、カナダ企業から派遣される場合もあれば、個人ビジネスのケースも多いです。
しかし、多くのリクルーターは、貧困層のタイ人が情報へのアクセスがないことをいいことに。
そのカナダ企業への紹介費、飛行機代、ビザ申請費などと理由をつけて。
お金のない彼らから、大体10000カナダドル(100万円相当)を徴収するんです。
実際、法律上飛行機代やそういった費用は企業側が負担することになっているので。
移住労働者がその費用を払う必要はないんですが。
そもそも情報にアクセスできない彼らにそんなことはわかりません。
多くの人は自分の土地を売ったり、借金をしたりして。
無理してでも払う必要のない費用を払いカナダにやってきます。
それでもし、彼らが良い企業に雇われるのならまだ良いのですが。
こうしたリクルーターを使う企業は、労働法を守っていないケースも多く。
移住労働者たちは、まともに扱われることなく、奴隷のような扱いを受けます。
カナダへやってきた移住労働者のパスポートを没収し。
小さいアパートに収容し、外出も許可なしにはさせず。
義務づけられている保険の手配も無視し。
彼らをカナダ人が誰も働きたがらない劣悪な環境下に置き。
約束した半分の給料しかあげないケースや、残業代も払わないケースが多く。
さらに、仕事の需要がなくなれば、契約期間内にも関わらず、彼らをクビにします。
カナダに来て、お金を稼いで家族を養い、借金を返す必要がある彼らは焦るわけで。
英語もできず、右も左もわからないカナダで途方に暮れ、連絡するのはリクルーターたちです。
そのリクルーターたちは、彼らにさらに多額の手続き料を請求し、違う企業に紹介します。
その悪循環に陥ると、彼らはもうお金も稼げず、サポートも得られなくなります。
これはそのフォーラムで、タイ人移住労働者が涙ながらに話した経験で。
翻訳を勤めていたキャシーの同僚も、泣きながら翻訳をしていて。
キャシーはなんというか、もう驚きで頭が真っ白でした。
会場にいた一人の黒人女性は、質疑応答で立ち上がり。
「奴隷制度の悲劇に面した先祖を持つ一人の黒人として、一人のカナダ人として、私はカナダという国でこのようなことが起きていることを恥じています。」
と涙を流しながら、語りました。
カナダといえば、リベラルで、人権が保障された国。
こんな現実がその裏にあったなんて、キャシーだって信じられません。
何よりも頭に来るのが、一国家として、カナダがこういった問題を規制したり。
こういった問題に直面してる移住労働者を保護する法律を有していないこと。
そんなやるせない後味のまま。
キャシーたちはフォーラムを後にし。
ウィンザーから車で30分ほど離れたレミントンに行き、実際にそこで働いているタイの移住労働者たちの家を2軒ほど訪れました。
私たちが訪れたのは、うちの団体や他の人権運動家の助けを借りて。
劣悪な労働環境を離れ、多少はまともな企業に雇われた人たちです。
彼らは、一軒家に8人で共同生活をしていて、お酒を飲みながら金曜日の夜を楽しんでました。
彼らはタイ人だけのコミュニティーを形成していて、英語はほとんでできません。
キャシーはタイ語ができないので、言葉では全然コミュニケーションはできなかったけれど。
みんな本当にフレンドリーで、一緒に食卓を囲み、タイ料理を楽しみました。
帰りに車の中で、キャシーはまだその日あったことを消化できずに。
直接自分が関わっているプロジェクトではないにせよ。
この仕事のスケールの大きさにとても驚きました。
結局、朝9時に出発した2人、トロントに戻ったのは夜の11時でした。
「今日は本当に、同行できてよかった。ありがとう。」
と最後に同僚にお礼を言って。
キャシーはまだまだ消化しきれない問題を抱えて、お家に帰りました。